二十八年目の失敗
昨日は、一日の業を終えて、午後六時前に、私は「ほりで~湯」へ向かった。宿泊者用の入り口玄関前に、大きな看板が立っていた。どうやら、昭和二十六年度に、この地元の中学を卒業されたみなさんの同級会の会場案内らしかった。
まず、サウナ風呂に入り、私は「う~む、昭和二十六年度…ということは、昭和十九年生まれの私より、幾つ歳が上の方たちなのかな~」などと、汗をタラタラと流しながら、ボーッとした頭で考えていた。いずれにしても、私が小学校へ入学する頃に、中学を卒業された方たちだから…、もう七十歳代に入った方たちである。今日は、温泉に浸かり、旧友たちと郷土料理を囲んで、飲み明かすんだろうな~。いいな~と思った。
この日の私は慌ただしかった。朝一番に、前日に電話のあった安曇野市教育委員会の若い係長が現れ、一時間ほどなごやかながら、ポイントを押さえた連絡交換と提出書類の確認等を行い、帰りに間際に、普段はおそらく聞けないだろう、幼子たちの歌声を聞いてもらった。
紺のスーツ姿で、メガネをかけ、書類の入った黒カバンを片手に下げた、まじめなサラリーマンふうそのままの彼は、両手を胸の前に、正しく出し、「パチパチ」と、力を入れて懸命にたたき、心のこもった拍手をし、目の前横一列に並んだ九名の園児たちに、「素晴らしかったです…」と、挨拶もしてくれた。
私は、この時点で、「?」と、何か大切なことを忘れていたような気が少ししたのだが、そのまま思い出せず、次の来客者、安曇野市本庁舎の情報統計係のTさんと、事務室の机にあるパソコンと向かい合ったのだった。
数年前から、毎年、この連休明け頃、文部科学省へ提出する「学校基本調査」の提出書類を、インターネットで行うようになっている。しかし、これがなかなか難しい。情報管理のセキュリティーの関係もあり。仮認証入力⇒利用者情報の登録⇒認証IDをメールで入手⇒パスワードで本認証を入力⇒使用手引書のダウンロード⇒電子調査票へ数値、その他も正確に入力⇒幾つかのチェック操作の後にデータ送信。そして、そのデータが正しく送信されたか、そしてのその内容の再確認をして、控えのプリンター等々。
今回は、私のパソコンがVistaになったこともあり、Tさんは普段XPで仕事しているため、やや使い勝手に手間取ったり、私が、かな入力で、彼はローマ字入力で、そのつど、入力変更したり、また、半角と全角指定の項目があったりと、一か所でも入力ミスがあると、エラーが出て次へ進めない、コンピューターは融通が利かないのだ。何だかんだで汗をかいてる時に、横の電話が鳴った。
「もしもし、豊科シオン幼稚園さんでしょうか?」。その女性の声を聞いたとたんに、私は、ハッとして、腕時計を見た。十一時を回っていた。「すみませ~ん!!。すっかり忘れていました!」。そうでした、この日は第二木曜日で、安曇野市の福祉施設「豊岳荘」へ行き、十時半から十一時半の、「光の子讃美」グループ活動の日だったのです。
室温九十度のサウナ風呂の中で、私は目の前の分時計に目をやると、サウナに入ってから、十二分を過ぎていた。たっぷり汗が流れ、息もやや荒くなってきたので、次は、水風呂へ、「ザブーン」と浸かった。この瞬間が気持ち良いのだ。脳内にドーパミンがドバーッと分泌される、気持ちの良い瞬間である。
昼前に豊岳荘へ出向き、「すいませんでしだ、二十数年間やって来て、こんなことは初めてです」と言って、私は何度も頭を下げた。一緒に行った園児たちも、私のために、一緒に頭を下げてくれたのだった。何十人もの高齢者の方々が、朝から楽しみにしていた時間を、私は、あろうことか、慌ただしさの中で、正に心が荒れていて、忘れて、心が亡んでいたのだった。
そして、「今度は、決めていただいた日の訪問を、何があっても最優先にしますから…」と、今月に、穴埋めする日をお願いして来た。その時に、高齢者のみなさんにも、直接あやまろう。「まいった、まいった」と、今度は露天風呂へ浸かり、目の前に迫る、雪解けで、やわらかな雪形が広がっている常念岳を見上げたのだった。
この日は、昼食前に幼稚園の畑に、トウモロコシ、枝豆、プチトマト、ナス、ゴーヤー、スイカ、その他の野菜類の苗を、幼子たちに植えてもらい。また二十日大根の種も蒔きもしました。昼食を済ませた午後にも、いくつかの仕事が入り、忙しく、慌ただしい一日だった。
ほりで~湯を出て、ホールを横切り、暗くなって来た西山の外へ出て、私は大きく深呼吸した。そして、いいな~、と思った。何がいいな~、なのかと言うと、旧友たちと、この宿泊施設で飲みかわしているだろう、方々のことだった。私も、中学の同級会が毎年行われ、今年も出席する予定である。小学校の方も、隔年で、今年は行われるらしい。帰りに、私はベイシアに寄り、プリン体予防処理のされたビールとつまみを少々購入して、妻と次男の待つ教会へ戻ったのだった。
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